ー江戸木目込み人形の概要

京都で発達した木目込み人形が江戸に伝わったもので、正徳年間(1711〜15)にはすでに江戸へ下った京都の人形師が多かったという。江戸が文化の中心地として発展してくるにつれて、木目込み人形も江戸風に変化した。
江戸における木目込み人形には@岡本玉水人形系統とA名川春山人形系統の2系統があり@の初代小林鉄之助は幕末に京都より職人を招いて創業し自身も木目込み人形師として作品を残している。

またAの初代名川岩次郎は、天保3年(1841)28歳のとき浅草須賀町の人形師瀬山金蔵より独立して、本所両国に創業した。以後両系統の弟子達により技術、技法が継承されている。
なお、岩槻市の木目込み人形は名川人形系統の流れをくむものである。

江戸木目込み人形は、木彫りの人形の衣裳の部分に溝を彫って、布製を糊で埋めていく技法による人形で頭は桐塑か素焼き、胴体や手足の一部に桐塑が用いられている。
顔は京都製の「ぽっちゃりとしてふくよかな顔立ち」と異なり「やや痩せ形で、小味の利いた、こまかい目鼻立ち」が特徴である。

【技術】
桐塑には桐、素焼きの頭には白雲土、着つけの生地には絹織物、綿織物
髪に使う糸には絹糸が使用される。伝統の技術としては次のものがある。

<素地造り>
桐の中粉と生麩糊を混ぜ合わせ、練り上げて作った桐塑の頭、胴、手足の
素地(ヌキ)を造り、乾燥室で乾燥させる、頭は素焼きのものもある。
桐塑の頭にあっては、地塗り、置きあげ、中塗り及び切り出ししたあと
5回以上の上塗りを繰り返す

<木目込>
着つけは筋溝に糊付けをしたあと、目打ちを用いる合わせ目、または
重ね目みによる木目込みをするがこの場合の糊には寒梅粉を用いる。

<面相描き>
面相筆を用いて目入れ、まゆ毛描き、及び口紅入れをする

<毛吹き>
スガ(適量の細い絹糸)をした後、スガ吹きをする。
この場合の髪型は結上、割毛、禿とする。

◇以上、グラフィック社刊「伝統工芸品技術辞典」より◇


【指定品】
通産大臣が指定した伝統工芸品「江戸木目込み人形」
とは次の用件をみたしたものをいいます。

●伝統的な技術又は技法によること。

@素地造りは、次の技術又は技法によること。

 (一)頭造りは次の技術又は技法によること。

 「桐塑頭」にあっては「地塗り」「置き上げ」「中塗り」及び「切り出し」
 をした後、五回以上の「上塗りを」すること。

 「素焼き頭」にあっては中塗り」及び「切り出し」をした後五回以上の
 「上塗りを」すること。

 (二)胴体造りは「素地みがき」をした後「地塗り」及び「筋彫り」
    をすること。この場合において「ヌキ」は「桐塑」とすること。

 (三)手足造りは、「地塗り」「中塗り」及び「切り出し」をしたあと
    五回以上の「上塗り」をすること。

A着付けは、筋溝に糊付けをした後、目打ちを用いる「合わせ目」又は「重ね目」
による木目込みをすることこの場合において、のりは寒梅粉とすること。

B面相描きは、面相筆を用いて「目入れ」「まゆ毛描き」 及び
「口紅入れ」をすること。

C毛吹きは、「スガ揃え」をした後「スガ吹き」をすること。この場合において
髪型は「結上げ」「割り毛」または「禿」とすること。


【伝統的に使用されてきた原材料】

  • 「桐塑」に使用する用材はキリとすること。
  • 「素焼き頭」に使用する粘土は、白雲土または
    これと同等の材質を有すること。
  • 着付けに使用する生地は、絹織物、綿織物または
    これらと同等の材質を有すること。
  • 髪に使用する糸は、絹糸とすること。


【製造される地域】

 埼玉県 岩槻市 春日部市

 東京都 台東区 墨田区 荒川区 足立区


【製造者の協同組合等の名称】

東京都雛人形協同組合
 〒111 東京都台東区柳橋2-1-9 東京卸売センター内
 電 話 03(861)3950

 ■指定品には「伝統証紙」が貼られています。